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2008年10月26日

しまや (弘前)

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時折、『好きすぎて、逆に○○できない』みたいなことがあるが、この店についてもそうかもしれない。訪ねて早2ヶ月が過ぎ、ようやくこうして書き上げた感じ。今更、夏の青森の旅のことを書くのもどうかと思うのだが、ここについては、是非とも書いておきたいと思いつつ、そんな思いが強すぎたようだ。

翌朝東京へ帰るという日の夕方訪ねたこの店は、正に旅の最終目的地として相応しい思い出となったし、そして、この店に来るために、弘前を訪れる日が来るだろうと確信めいたものを感じている。

弘前城の近く、郷土料理という暖簾を上げるしまや。そもそもこの店を知ったのは、太田和彦氏が出演するニッポン居酒屋紀行。いつか行きたいなぁと思っていたところ、案内してくれたtakapu氏に洗脳され、期待満々で尋ねることになったのだが、結果としては、その期待をも軽く超えられてしまった格好だ。

店に入るとカウンター奥には既に地元の方々。手前のほうのカウンターに陣取ったのだが、目の前にはバットによそわれた料理がずらりと並んでいる。なんだか判るものから、さっぱり判らないもの、判るけどこの組み合わせは知らないなぁというものも。

とりあえずはその一部を写真で眺めていただくとして。

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身欠きにしん。噛みしめると煮含んだ旨みがじわり。

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東京で見るのとは二周りくらい細いもやし。細いのにハリがよく、シャキシャキした食感が印象的。

青森といえば、烏賊や

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鮪なわけだが、

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魚系で面白かったのは、『たらたま』。

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『たらたまできる?』の声に、『それ何ぞ?』と思っていると、出てきたのを見てなるほど。鱈の干したのに玉子の黄身。この店には珍しく男の料理的なものだが、絶妙な旨さ。これ、思いついた人天才!

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ハタハタの味噌焼き。上のシソ巻きもそうだったのだが、使われている味噌が実に旨い。じっくりと時間をかけて発酵熟成させた、たおやかな香りと味わい。ハタハタと一緒に盛られているのは『茗荷の田楽』。この日の朝ごはんを頂いた食堂でも、茗荷と味噌を組み合わせたメニューがあったのだが、自分にとっては茗荷と味噌の組み合わせは未知のもの。その相性の良さに、以後、我が家の食卓に茗荷+味噌の料理がのぼることが多くなった。

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『さもだし』も青森で知ったもの。『さもだし』とは『ならたけ』という茸。『ナット昆布』のなるものも、初めて知った。

しまやは、聞くところによれば、もともとはご飯を食べさせる店だったのだが、お客様からお酒もだせばといわれ、酒も出すようになったのだそう。弘前の酒「豊盃」の燗は、弘前の料理とこの店にぴたりと寄り添う。

ずいぶんお腹も満ちたのだが、ここから出たくないという気持ちで一杯になる。「なんでだろう」と思いながら目の前の壁に視線を向けると、実家の台所にあったような、おたまや菜箸などがかけてある壁と調理台が目に入る。うちのはこんなに綺麗に掃除も整頓もされていなかったけれど、こんな風景だったっけなぁ。

場所も雰囲気も全く違うけれど、構えなくていいというか、肩の荷を下ろしているようなというか、ちょうどいい加減の風呂にとっぷりと浸かっているような心地よさ。母性的な懐の深さ。

ついつい、新しいもの、斬新なものに目を奪われがちだが、こんなにも素晴らしい文化が継がれていることこそに、目を向け、誇りに思いたい。それにしても、こんな日常があることが、こんな店が極近くにあることがうらやましくてたまらない。ちなみに、津軽地域の郷土料理の中から、特に伝承・普及すべきもの特徴や調理方法の紹介等をすすめている津軽料理遺産プロジェクトにも協力されているそう。

今はもう秋。もうしばらくすると、冬支度を始めるのだろうか。今ならどんな料理で客を満たしているのだろうかと思うと、今すぐにでも飛んで行きたくなるのである。

【お店情報】
しまや 青森県弘前市大字元大工町31−1 地図

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コメント

地元の馴染み客にも、初めて訪れたお客さんにも愛されるお店。だから、私は心底このお店を愛しています。

津軽料理遺産プロジェクトにも協力いただいておりまして、今の私の人生に欠かせないお店です。

投稿: takapu | 2008年10月26日 17:43

●takapuさん
先日はありがとうございました。
書いている途中も飛んで行きたくてしかたありませんでした。
実は、もう一つ印象的だったのが、
takapuさんの地元の方からの愛されっぷりでした(笑)

投稿: のむのむ | 2008年10月27日 08:06

たらたま、ですか。
美味しそうですね。
どこに行くにも
スタイルを崩さず、
美味しい店を探すのむのむさんはすごい。

投稿: ホアキン | 2008年10月27日 10:01

のむのむさん、初めまして。
いつも拝見しています。料理への優しさを感じるコメントに、訪れたいお店がほとんどです。いつかはそのお店に、と想いながら目と文章で満足させて頂いています。

しそ巻き美味しいですよね〜。
生まれ故郷の弘前を離れてはや○十年、
わがソウルフードのフルコースに、幼い頃を憶い出し、里心に火がつきました。
梅しそ漬け(梅と紫蘇の漬け物風)もお試しになりましたか?お勧めですよ。
りんごの他にもフレンチの里でもありますので、またお出かけの際には是非どうぞ。

投稿: まろん | 2008年10月27日 19:39

●ホアキンさん
いえいえ、食い意地飲み意地が張ってるだけです...(苦笑)
でも、ここはほんとよかったです。
弘前へ行かれることがありましたら、ぜひ。

投稿: のむのむ | 2008年10月28日 08:01

●まろんさま
初めまして。
コメント頂き、またご覧頂きまして、ありがとうございます。

弘前のご出身なのですね。本当に素晴らしい文化。
今回巡り合えて、本当によかったと思っています。
梅しそ漬けは、拝見しただけで、頂いてないのです。
というよりも、弘前にいたのが半日もなく、
もう少し滞在するべきだったと残念で仕方ありません。
また、必ず訪ねたいと思っています。
その折には、梅しそ漬けも、フレンチも。

投稿: のむのむ | 2008年10月28日 08:17

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