潤菜 どうしん (新富町)
新富町の表通り沿いにありながら、その存在を知らせるのは、店へと続く階段の入り口に極小さい看板だけのせいか、なかなか見つけ辛い店。しかしながら、その見つけ辛さが、大人がしっとり食事をするに相応しい雰囲気を作り出しているようにも思う。細い階段を上がると、温かい色の照明が、木の肌の風合いを生かした空間を柔らかく照らす。10席ほどという広さも具合がいい。
料理は月替わりのお任せ1本(6,800円)。先付からデザート、菓子まで季節感たっぷりの皿が続く。
先付:わらびと白こんにゃく煮
蕨の勢い、昆布をベースとした出汁の味わい。今後の展開がとても楽しみになる。
先付:菜花とわかめ 蛤あんかけ
伺ったのは、ちょうどひな祭りの日。椀の蓋を開けたとたん、口々に驚きと嬉しさを交えたの声が上がる。
先付:小松菜とホタルイカ 煮びたし
ホタルイカのわたに誘われて、お願いしたのが冒頭の写真。好みの猪口を選べるのは嬉しい。
盛合
とりあえず見惚れたまま一杯やりたくなる美しさ。そして、一つ摘まんで、また一杯。
こごみ・芽キャベツ油焼き、花わさびの酢漬、数の子粕漬、からすみ粕漬、さごし酢〆、紅芯大根酢漬、しいたけ酢漬、金美人参、蓮もち、わかさぎ南蛮漬、巻き湯葉含め煮、せり塩漬。どれも丁寧で、ひと手間ふた手間かけたものばかり。
椀:そら豆のすり流し
トロリと喉元を過ぎると心地よいの青さと甘さがふわり。
しのぎ:うるいと焼とちおあげ 酢味噌を添え
こちらも早春の贈り物。
焼物:のどぐろ スナップエンドウとおぼろ昆布を添えて
身の厚さに惚れ惚れしたところ。口にすると、見事なのどぐろを僅かな塩味で生かした焼き物。幸せですよ、これは。
強肴:大根と蛸の煮物
左程珍しくない組み合わせにも新鮮味を感じるのは、その繊細さ故。柔らかく上質な味わい。
飯:ふきのとうごはん、味噌汁、香の物
噛みしめると、ふわりと抜ける春らしい苦み。土鍋炊きの嬉しいおこげつき。
デザート:クリームチーズ練りもち
菓子:百合根ようかん、抹茶
改めて見ると、品数の多さに驚く。たくさん食べて満ちた食後感ではあるものの重さを感じないのは、野菜を中心として、その素材力を存分に引き出しているからこそ。野菜を謳う店も多いが、料理としての完成度の高さが印象に残る。店名にある「潤菜」とは、「心を潤す野菜料理を提供したい」という想いからだとか。
飲み物代を含めて、一人9,000円ほどの会計。美味しいものを頂きながら、ゆっくりと語らうに丁度いい。母を連れて来るにも良さそうだ。しずりんさん、たけさん、ご一緒頂きありがとうございました。
【お店情報】
潤菜 どうしん 新富1-9-11 亀田ビル2F 地図
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