酒盃 (秋田)
今夏の旅の一等最初の目的は、永年憧れていた五能線に乗ること。そのルートを考えたときに、これはいいチャンスと思ったのが、先般のANDRAとこの「酒盃」だ。
最初に酒盃を訪ねたのは、おそらく7年前の冬。街灯がぼんやりと灯る暗い雪道に、すくりと建つ丹精な日本風の家屋がひどく印象的だった。照明も看板も控えめだが、それがむしろ好ましい。
秋田の酒と、秋田の郷土料理に則りつつ更に洗練させた料理が並ぶここは、東北の名居酒屋として名高く、それは、最初に出される6種類のお通しからも窺えるというもの。箱膳に収められたお通しで、見た目にも楽しく、これだけでも十分呑めそうだと心が躍る。
お通しを愉しみながらも、頭の隅で考えるは次の注文。品書きには、県内でとれる魚介や比内地鶏、自家製の豆腐など、どれにしようか悩ましい品々が並ぶ。選んだ冒頭写真の「〆鯖炙りたたき」や「かに餡かけとろとろ茶わんむし」など、秋田の旨口の酒に負けず寄り添い、肴を口にし、盃を傾けるたびに、ほぅと悦に入る。
カウンターに並んでいた客が引け、頃合を見計らって入ってきたご常連さんだけになってきた頃、ご主人もカウンターのこちら側の人となり、「白魚とジュンサイの貝焼き」を頂きながら、例えば「秋田の貝焼きと青森のそれとの違い」なんていう、秋田の酒と食についての話が静かに進む愉しいひと時。ご主人は、ともすると少々怖い印象を受けるやもしれないが、話しかけると穏やかに微笑みながら返してくれる。料理が供される器や酒器も、ご主人によるものだそう。
ほのかに灯る白熱灯と、磨かれ鈍く光るカウンターや家什。旨い酒と肴を前に、じっくりと腰を据えるにこの上ない。場所はかなり分かりづらいが、ぜひ訪ねていきたい場所。
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コメント
のむのむさん、こんにちは。
酒盃の文字を見て、思わず書き込んでいますっ。
まさか、こんなところにまでっ!
私が伺ったのは、もう15年近く前になりますが、未だにあの晩の感動は余韻として残っています。
風流な佇まいの建物。それはそれは立派な御通し。美味しい貝焼き。目移りする揃えの日本酒。
そして、長髪長髭の仙人のような御主人。
またいつの日か、と思いながら年月の経つのは早いものです。
御主人はお元気だったでしょうか?
残暑厳しい折ですが、お身体ご自愛のほどを。
投稿: dolphinkick | 2011年9月16日 15:54
●dolphinkickさん
dolphinkickさんも、酒盃へ行かれたことがあるのですね。
ここは、ほんとに記憶に残るお店ですよね。
最近、東北へ行くことはあっても、太平洋側のことが多かったので、
随分と久しぶりになりましたが、
思い出どおりの素晴らしい一晩となりました。
ご主人もお元気でしたよ。
いろいろとお話できたのが、今回の収穫です。
今年の夏は元気ですね。
紅蘭へも行きたいと思っているのですが、
もう少し涼しくなってからにしようかと思っています(苦笑)
投稿: のむのむ | 2011年9月18日 13:22
のむのむさん
お返事ありがとうございます。
ご主人はお元気でいらっしゃいましたか。
ぜひぜひ再訪を工面しなくてはいけませんねっ。
紅蘭さんは、どうぞ焦らずにぜひ(笑)
投稿: dolphinkick | 2011年9月19日 18:21
●dolphinkickさん
ぜひぜひ。感動の記憶と新たな体験が、
また、素晴らしい思い出を作ることと思います。
宿題にすると、ずっと宿題にしておく傾向があるので、
紅蘭さんは、きっと今年中に!
投稿: のむのむ | 2011年9月20日 09:18