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2013年3月31日

つる幸 (金沢)

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金沢に降り立つのは初めてだ。今回の旅の目的は富山だけれども、せっかく日本海側まで行くのだからどこかへ寄って行こうと、未だ訪ねたことがなかった金沢を訪ねることにした。

金沢での夜と昼をどう過ごそうか。素晴らしい文化と食材が揃う街だけにかなりの難問だが、外せないのは「金沢らしさ」。悩んだけれども、こんなきっかけでもなければと決めたのは「つる幸」。今更自分がどうこう説明するまでもない名料亭。けれども、とても素晴らしく、余りに楽しい時間を過ごさせて頂いたから、そんな思い出話を少し。

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冬の金沢といえば、例えば兼六園の「雪吊り」のように、雪の情景が思い浮かぶが、今年の金沢は雪が少ないらしい。確かに、路肩にも雪は積もっていないし、前日に会った知人曰く、今年は東京のほうが降っているくらいだそうだ。だけれども、店を訪ねる少し前に雪が降り始め、座敷に通された頃には、絵に描いたような雪景色。雪が降り積もる音が聞こえそうに静かで、この空間に居られるだけでも来て良かったと思う。

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前菜には、能登の郷土料理の「子付け」。「コツケ」と耳で聞いても全くイメージが出来なかったが、「鱈の子を鱈の身につけたからなんですよ」と説明を受けるとなるほどの「子付け」。ここでは、鱈の白子を溶いたポン酢でと鱈三昧。

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ズワイ蟹に、口溶けのいい能登牛と贅沢な品はもちろん、他の素晴らしいこと。噂に聞いていたブルーチーズの茶わん蒸しは想像以上に印象に残る一品。節分に因んでの福升には、一々美味しい幾種類かの豆と賽子状の野菜。何気なく口にした
蕗には、このわた掛け。ゆっくりと広がる香りに、これは酒がなければやってられない気持ちになる。

そんな空気を見取ったのか、絶妙なタイミングで酒の特徴を話してくれ、書かれていないものを提案してくれる若女将。料理に心を奪われてかなり控えめな酒のペースだったが、何時もの事だが「お強いですね」と云われて苦笑い。加えて「羨ましいくらい」と仰るから、聞いてみれば、ご自身はあまり飲めないのだそうだ。それでも仕事がらは勿論、味も好きで、色々と飲んでみるんですよと朗らかに笑う。料理は勿論だが、場を和ませたりと、ふとしたところ感じさせるもてなしの気持ちが、とても印象的だった。

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椎茸の真薯は、
梅が描かれた椀の蓋を開けると、ふぅわりと広がる馥郁とした香り。圧することはないけれども、しっかりとこれぞと思わせる出汁は、ありきたりだけれど、日本人で良かったと思う。他、印象的だったのは椎茸。好物なこともあるが、旅を通して金沢の椎茸は肉厚で旨みがあって、本当に素晴らしかった。

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造りは、がすえびに、甘海老。鰆、烏賊と添えられたもみじこなど。ぜひ食べたかったはがすえびは、ぷりぷりと張りのある食感と噛むほどに広がる甘み。

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鰤の焼き物は、端から皮の裏側まで美味。稲荷にはからすみ。

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加賀野菜の源助大根を丁寧にくり抜いて仕立てた釜に、季節を盛り込んで見せた治部煮。

煮物といえばということで、若女将と家庭での煮物の話。石川では、「じっくりことこと」が普通の家庭でも普通というところから始まり、「カレーもコトコトだから、カレーは、具が煮溶けてなくなってしまったものだと思ってたんですよ」と、金沢カレーの話に。こういう地元を知る方とのやり取りは、旅の醍醐味。

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口の熱で溶けて旨みが広がる鰤のルイベ。

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食事は
身と内子外子をふんだんに入れた香箱蟹ごはんは、その芳香だけで恍惚。今回の旅では、いろんな店でいろんな形の香箱蟹を頂いたが、それぞれが素材とその店らしさを生かしていて、ホントにこの季節に来て佳かったと思う。

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最後には、果物のゼリー寄せに、上生菓子と抹茶。
1万円のコースで、余りある幸せな時間と余韻。この充足感は都内では、きっと難しいのだろうなと思うほど。金沢は「ついで」のつもりだったが、今度は金沢へ向かう旅を。

【お店情報】
つる幸 石川県金沢市高岡町6-5 地図

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