あんじゅ （高輪台）

牡蠣の季節ならこれを食べなくてはというものが幾つかある。三州屋のカキフライはもちろん、美々卯の牡蠣そば。そして、アンジュのカキフライやつゆそば、あんかけご飯もそうだ。でも、残念ながら銀座のアンジュは2月に閉店し、高輪台へ移転。この知らせは、自分にとっては急な知らせで、これからあれを食べて…なんて考えていた気持ちを、丸ごと浚われた感じ。しかも、移転先が馴染みのない場所と聞けば、心残りなんて処では収まらないもどかしさ。

でもやっぱり、このままでは牡蠣の季節は終われないと、向かった高輪台。新しい店は、テーブル主体のアットホームな造り。変わらずご主人とお母さんが、以前と同様に、串揚げと中華料理を振る舞っている。ビールを片手にメニューをじっくりと眺めると、串揚げや中華の他、和食の肴的なものもあったりと幅が広がったようだ。しかも価格は控えめ。普段使いしてもらって、ここに根付きたいというお気持ちなんだろうと思う。

何度も伺ったけれども、一度食べたかどうかの串揚げは１本からでも。この日は、海老やささみ、うずら等定番の他、湯葉なんていう珍しい串も入ったコースを貰って、追加で季節のものを。


この時期だから、タラの芽やふきのとうといった山菜や、串揚げでは初めてみるホタルイカ。もちろん、忘れてならない名残りの牡蠣。薄衣のサクッとした軽やかさの後には、ジュルリと垂れるエキス。う～ん、これは、牡蠣フライとはまた違うお楽しみ。


あんじゅのもう一つの看板の中華から、まずはとお願いしたのはお初めの餃子。オーソドックスだけれども、焼きとむっちりとした餡も美味しく、やっぱりあんじゅの中華は旨いと思う。

その最たるものが、あさりの豆鼓炒め。つゆそばでお馴染みの殻から食み出そうなほどにぷっくりした炒め上げたあさりの旨みと、豆鼓の香りとコク。銀座にあった頃、夜にも伺っておけばよかったと今更ながらに思う。

帰り際「お近くなんですか？」と聞かれたから、「いえ、銀座にあった頃…」と話すと、「やっぱり、覚えてますよ」とひとしきり。高輪台駅の東口を出て3分程。まだオープンして1か月と少しだが、店は満席。仕事帰りやご夫婦でというご近所の方という方ばかりで、ずっと前からここにあったような馴染み具合。これからのご発展をお祈りします。

【お店情報】
串揚げと手作り料理の店 あんじゅ　高輪3-9-20 1F　地図