長寿庵 玉子丼 （銀座）

忙しかったり、気が漫ろだったりすると、いつも以上に玉子が食べたくなる。今日は、玉子でとじた何かで、「久し振りにカツ丼」とか、「やっぱり親子丼か？」と考えていくと、そういえば玉子丼って随分と食べていないと気付く。

記憶が確かならば、親子丼よりも玉子丼に先に出会っていたと思う。その昔、実家の近くに市場があって、その向かいにあった食堂からとった店屋物の玉子丼が、きっと最初。今考えてみれば、親子丼もあったはずだが、恐らく、肉を受け付けない母が自分と同じものをと頼んだんだろうと想像する。

そば屋ならば玉子丼もあるだろうと、目指したのは長寿庵。品書きを開くと、一番先頭にあった季節限定の「春野菜の天せいろ」が目に入り、激しく気に合ったけれども、頁を捲っていくと、親子丼と並んで玉子丼(840円)の文字。「玉子丼をお願いします」と云うと「玉子丼ですね」と返してくれた店員さんの様子を見ると、恐らくこれを頼む人は余りいないのだろうと思う。

上京してから玉子丼を口にしていないから、少なくとも１０数年ぶりに出会った親子丼は、真ん中に玉子の黄身を乗っけたスタイル。シンプルなつくり、丼つゆでちょっと茶色くなった感じに、思い出が折り重なってノスタルジック。

鴨せいろの元祖と謳う店ゆえ、これを注文する方も多いが、せいろにカレーライスと慣れた様子で注文するご常連も多い。歴史の長い店だが、敷居は低く活気があって「街のそば屋」らしさがとても好ましい。

【お店情報】
銀座 長寿庵　銀座1-21-15　地図