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2013年6月23日

椿 (高円寺)

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高円寺の駅前から商店街を抜けて、早稲田通り。通り沿いを少し中野方面へ歩くと、こじんまりとしているが、雰囲気のあるむき出しの灯りと白い暖簾。感じがいいなァと近づいてみると、山形の料理に酒、手打ち蕎麦が楽しめる店らしい。

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店の中も、外から見た印象そのままの昭和モダン。特にそれを感じるのは、設えと器。例えば、酒器と店の風景なら、華やかではないが、密やかに艶っぽい。

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ご主人は、季節を捉えて表すのが得意の様子。初めて伺ったときにグッと来たのは、名刺代わりのお通し。季節らしく、朱の器に、桜に見立てた明太子の緩い餡をかけた菜の花のお浸しは、まさに日本的な美しさで、ひどく印象的だった。つい先日伺ったときは、涼しげな硝子の器に、蛸と胡瓜、若芽の和え物。蒸し暑さも何処へやらだ。

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好物の〆さばは、キリリとした正統派。これらの皿を見ていると、一見強面に見える店主は、実は結構繊細な方なんだろうと思う。

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つい先日頂いた鯵の刺身は、涼やかな皿にたっぷりと。身の厚みも然ることながら、その旨みの濃さ。うぅんと唸って、温めの酒をツルリと入れる。そこへ開け放した扉からサラリと風が抜けていく心地好さと云ったら。

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酒は杉勇を中心に山形の酒がずらり。肴も芋煮に、玉こんにゃくと山形らしいものが並ぶ。季節ならば、ばっけ味噌を挟んだ蓮根の天ぷら。食むと、シャクっと小気味よい音に続いて、鼻腔に広がる蕗の薹。コシアブラなど山菜の天ぷらも入って、春の香りが目一杯。

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暑い季節になってきたら、山形の「だし」をのせた「だし豆腐」。つるりとした豆腐の喉越しと青味が口に涼を呼ぶ。

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だらだらと飲み続けるだらしのない飲兵衛なもので、飲んで〆ることはあまりないが、ここの蕎麦は頃合いが良く、時につるりと。蕎麦粉は山形の「出羽かおり」。これまでの酒肴に負けない丹精さで、するりと喉元を過ぎる。

1階はカウンター8席程度。一軒家を改築した2階には座敷とテラス席もあり、これからの季節には格別だろう。駅から少し離れたところにあるからのこその静やかさ。次伺うときには、どんな季節を見せてくれるのか、今から楽しみなのだ。

【お店情報】
椿 中野区大和町1-65-2  ぐるなび

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