おおはま(阿佐ヶ谷)
自分がこのブログを書いていることをご存じの数少ない人だからか、「他に行くところがあるじゃないですか」と大濱さんは云う。これに対して自分はいつも、「ここに入れないからですよ」と答える。多少の冗談も入ってはいるが、それは至って本音だ。そんな大好きな店が、今日を以って閉店する。
阿佐ヶ谷駅の北口を出て、中杉通りを暫く歩いて斜めに細い道を入るという、地元の人以外には分かりにくい場所にある「おおはま」。オープンして丸3年とまだ若い店だが、阿佐ヶ谷の外からも人が訪ねてくる繁盛店だ。席が空き始める頃合いを見計らって、ご近所のご常連さん方が一人、また一人とやってくる時分に、自分も混ぜてもらうのが、此の頃だった。
兎に角、お通しから楽しみだった。ある日は、鮪の山かけだったり、筍と蒟蒻の煮物だったり。
またある時は、法蓮草ともやしの和え物だったり。時間が遅くて、その日のお通しがなくなってしまうと、「野菜小鉢から一品お好きなものをどうぞ」なんて日もあったり。
その野菜小鉢は、必ずお願いするものの一つだ。日によって内容が異なるが、人気の一つは、ジュワリと旨い出汁が染みだす、茄子の揚げ浸し。昨年の夏、後輩を連れて行ったときに、彼らが口々に「おいし~」と感激していたことは、いい思い出だ。
或る日は、自分の好みの分葱のぬただったり、ポテトサラダも日によって様子が違ったりと、とても楽しみだった。
他に好きだったのは、揚げ物。夜に揚げ物を食べることは殆どないが、ここでは別。季節によって、レアなアジフライだったり、幼鮎の天ぷらだったり、先日伺ったときには、ふわっふわの身厚な穴子。翌日に持ち越さない軽さと旨さの両立ぶりが素晴らしかった。
最近感激したのは、この春巻き。本当はワカサギの春巻きをお願いしたのだが品切れで、よっぽど残念にしていたのか、急遽、代わりにお願いした、桜エビ入りのさつま揚げの具を中身にして、春巻きにしてくれたもの。サクッとした軽い食感の後に膨らみ広がる魚の旨みと桜エビの香り。そして、刺身なら一枚から、こちらの様子に合わせて、いろいろと提案し、許容してくれる懐の深さは、我儘な酒飲みには堪らない魅力だった。
純和風のものも多いが、意外に和洋折衷で、作りたてのシュウマイは素晴らしく旨かったし、ブルーチーズのムースも、見事に日本酒に添わせた逸品だった。
先日、お別れの挨拶に伺って、最後の最後に頂いたのは、作るときに一番本気になると云われるらしい、出汁巻き(携帯の写真で申し訳ない)。もっと色々と食べてみたかったものあるし、何より、どこか少年っぽく、さっぱりしているように見受えるが、色々な気遣いをしてくれる大濱さんが大好きだった。
この夏はいろんな場所に行って書いておきたい場所、店が沢山あるが、それはさて置いても、これだけは書いておきたい。大濱さん、本当にありがとうございました。どうぞ、お幸せに。そして、またいつかお会いできることを。
【お店情報】
おおはま 阿佐谷北1-44-14 阿佐ヶ谷北MTビル102
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