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2013年11月 3日

しまや (青森・弘前)

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青森に来たら、まず、寄らなければいけないところ。「まず」の意味合いは、もちろん、最初伺ったときにすっかり魅了された、自分にとって何度も訪ねるべき店であること。

もう一つは、開店が午後3時ということ。東京から新青森を経由、弘前へ着いて、ほぼ店へ直行。こんな時間から腰を据えられる店があるというのは、短い旅を愉しむで、この上ない幸せだ。

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開店3時というのは、正確には3時「頃」。この日も、暖簾が上がっているのを確認して店に入れば、お手伝いの学生さんが、「買い物に行って、まだ戻ってなくて」と女将さんの所在を教えてくれる。ビールを貰って待っていると、「あらあら、いらっしゃい」っな具合だ。この店に連れてきてくれた友人の話などをしつつ、カウンター向こうの女将さんは、手際よく料理をし、琺瑯のバットに装う。
並ぶのは、堅苦しいものではなく、家庭で食べられてきた料理だ。

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例えば、もやしの油炒めなら、髭をとり下処理したご当地の細長いもやしを、人参や油揚げと共に、サッと炒めたもの。何てことのない料理だが、ハリよく、シャクシャクと心地いい。素材の持つ特長と、手間暇を惜しまない気持ちが生みだす淑やかさ。

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茄子の紫蘇巻きなら、巻き込んだ味噌と津軽の大きな紫蘇の香りの佳さ。これに、味噌と油を吸った茄子の旨みがグッと来て、酒を呼ぶ。

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実は高野豆腐が好物だ。何が好いって、食感と喰んで出汁が溢れるところ。で、これは人生で一番美味しい高野豆腐だったと思う。高野豆腐自体がとてもしっかりして旨いところに、帆立のエキスと出汁を吸って、これが、食べるとじゅわりと口一杯に広がるのだ。

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「こっちでは、頭をよく食べるのよ」と出してくれたのは蛸の刺身。

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黒板に書いてあるのを見つけて、お願いしたのは「たらたま」。鱈の干したものに玉子の生卵を入れたもので、初めて、ここで食べたときに、これを考えた人天才!と思ったものだ。「最近は、味つきの干し鱈が多くて、味なしのが少なくなったのよね」と残念そうに話す女将さん。鱈の旨みに玉子のコクが馴染んで、鱈が旨くなるのはもちろん、
鱈の旨みがしみこんだ玉子をご飯にかけたい衝動にも駆られるのだ。

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そして、ハタハタの田楽。まだ卵が入る前のハタハタ本来の旨さ、たおやかな味噌の香りが、ぬるめにつけた豊盃に、ぴったりと添う。

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週末ということもあって、家族旅行と思わしき方や、地元のお嬢さんがお友達を連れてという方と客層もいろいろだが、誰ともにこやかに話し、料理を進めていく。その様子を見ながら、ここが好きなのは、料理の素晴らしさだけでなく、どこにでもありそうな佇まいと、ゆったりとした母性的な空気感なんだと思う。


会計を申し出たら、「これ食べてって」と差し出してくれた桃を頂きながら、さて次はどの季節に伺おうか、考えていた。

【お店情報】
しまや 
青森県弘前市大字元大工町31-1 地図

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