福よし (気仙沼)
季節が替えて、また愉し。
福よしに来るのは、いつも夏~秋ばかりだが、今年は11月も終わりの頃にやって来た。というのも、ここで牡蠣を食べたかったから。
昨年は盛夏の折だったから、1年と数か月ぶり。「お久しぶりですね」と声をかけてくれた板場を仕切るお兄さんに、お任せでとお願いすれば、後は、身を任せるのみ(お任せは3,000円~)。先ずはと定番で出される「烏賊のわたやき」を突きながら、この店を通じて知り合った知人の近況などを話していると、1年と少しの空白も、あっと云う間に埋まってしまう気がするから不思議なものだ。
お任せなら、ここで旬の刺身の盛り合わせが入る。目の前で捌かれていく魚を見ては、アレが後で自分のところにもやってくるのだなぁと、酒を呑むのは愉しいが、それが目の前にやって来たときの迫力足るや。北寄貝やホタテ貝柱に海老、いつも目にする旨い秋刀魚に、好物の〆鯖!やっぱり季節を換えてくるってのは、いいもんだ。
続いては、白子。これも季節を替えて来たから出会えるもの。ぷりんと張って、襞もくっきり。これは旨いに違いないよなァ――なんて口にすれば、その瑞々しさと透明感に目を見開いた。白子には、まったりこっくりした印象しか持っていなかったから、この若々しさはびっくりだ。
そして次に登場したのが、お目にかかりたかった牡蠣! 長さも胴回りも立派な大粒の牡蠣に気持ちが逸る。しっかりとした芳ばしい衣にガブリと齧り付くと、ほわりと鼻を擽る海の香りと、殻付きの蒸し牡蠣のような身の食感。なるほど、衣が牡蠣の殻の役目をしているんだ。火は入って旨みは凝縮されつつ、適度な水分を残してぷりぷり。これは牡蠣を美味しく食べるためのカキフライだ。
続いては、福よしといえばの焼き魚。この日は、脂がのってホクオクのホッケと、
名物の喜知次。先ず、その焼き上がってきたときの香りに驚きたい。魚ではあるが、海老や蟹を焼いたような香ばしさ。その芳しくパリパリの皮目の下には、艶々と脂の湛えた白肌。口にすると、旨味やコクがほろほろと広がっていくのだ。
そんな具合で、いつもは猫さえ見向きもしないほど綺麗に食べつくしてしまうが、今日は頑張って頭を残して、憧れの喜知次スープ。残った頭や骨にスープを注いでくれるのだが、香りや脂がスープに染み出て、こりゃ堪らん。葱が、地味だが実にいい薬味。
ここからはすっかり飲みモード。秋刀魚の煮物で燗酒を秋刀魚。さすがにお腹も一杯だ。
久しぶりの気仙沼の街は、記憶にあるよりもずっと、人や車の流れが多くなり、新しい建物が増えているように思う。けれども、一方で、一関へ戻る車中で目にした仮設住宅も忘れられない。
実は、この時期、魚を焼いていた囲炉裏端では、牡蠣の串焼きもやってくれる。次回は牡蠣の串焼きを。いやいや、少し季節を替えるがいいか。いずれにしても、また気仙沼へ、福よしへ。
【お店情報】
福よし 宮城県気仙沼市魚町1-6-6 地図
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