ととまめ (阿佐ヶ谷)
阿佐ヶ谷駅の南側。中杉通り沿いのビルの2階に、カウンター9席だけの小さな店がある。土地勘のある方なら、鰻や焼き鳥の稲毛屋の裏手と云えばわかりやすいだろうか。細い道に小ぢんまりと置かれた行灯が目印だ。
兎に角、伺うたびに愉しくてドキドキする。その理由はなんだろうかと考えるが、その一つは、旬の食材を使った料理だと思う。先ず、最初に出される「膳彩セット」がとても好い。或る日は、3つのさや豆の胡麻和えに、厚揚げとトマトの煮物、和風の酢辣湯。胡麻和えの瑞々しさと青い香りや、穏やかな酢や辛味の使い方がとても印象的だった。
つい先日は、茄子の田楽に、半夏生だからと蛸と蛇腹胡瓜。
そして、蒸し暑い日だからとすり流し。これらの合わせる酒には、日本酒やビール、焼酎などもあるが、ワインに拘っていて、自ら「変態」と仰っているのも面白い。実際、作られる料理との相性がとても好く、黒板にないものも紹介してくれるのも頼もしく、興味深い。
膳彩セットの他にも、肴から、しっかりとお腹を満たす料理、締めのご飯までいろいろと。或る日には、出汁巻き玉子と悩んで、ズッキーニとトマトのグラタン。ソースは使わず、チーズとタプナードを使ったツマミ仕様というのがとても好み。そうそう、出汁巻きと云えば、好物なのに、この店では3度目に伺うまでお願いしなかったという程に、並ぶ料理がどれも美味しそうで悩ましいんだ。
それに、先のグラタンもそうだが、ジャンルにとらわれないものも好きなところだ。蒸し鶏とたっぷり野菜なら、和風とも中華風とも云えそうなもの。しっとりとした鶏肉の下に、瑞々しい胡瓜やスナップえんどうなどがたっぷりと。タレには辛味が利いていて、頗る好み。
出汁巻き玉子は、入る具を変えながら、定番的にあるように思う。頂いた日は穴子入り。注文が入るたびに、焼いてくれるそれは、品の良い正統派の出汁巻き。しっかりと火は通っているが、口当たりが滑らかで、溶けると出汁の旨味がふわりと立つ。こうなると、抱かれる具による違いも気になって来るというものだ。
オープンは今年の2月。店主は、料理上手で明るくキュート。お人柄もあるのだろう。既にご常連の方もいらっしゃる様子。なお、件の行灯に灯りが点っているときは、空席があるというサインなのだそう。盛夏、そして秋、冬へ向かうと、どんな料理が出るのだろう。今から愉しみでならないのだ。
【お店情報】
ととまめ 阿佐谷南1-35-2 ル・シャポー多丸家館 2F 地図
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