さきと (博多/赤坂)

ゴールデンウィークに九州には行ったが、さきとは休みで行けず仕舞。でも、やっぱり年に一度くらいは伺いたいと秋のさきと。

開店時間の6時に合わせて伺ったが、すでに先客が何人か。ここに来るのが愉しみでならないという方が多いから、大抵こう。開店ぴったりにやって来る方の多いこと。こういう客を先ず迎えてくれるのは、お通し。この日はクエの荒煮とギョロッケ。

ここに来たなら、先ず食べたいのは、刺身の盛り合わせと、ごま鯖。刺身の盛り合わせには、白身の魚がたくさん入るところが好きだ。この日は、つやつやで上品な甘みの真鯛、軽く炙ってじんわりと脂を滲ませたのどぐろが素晴らしかった。

そして、ごま鯖。立派な厚みのピカピカの鯖が甘口の九州醤油と胡麻の香りを纏って、更に引き立つ旨みに甘み。これこれ。これが好きなんだ。

この日の品書きで目を惹いたのが、あん肝。特上から、とても旨い、旨いから、下はいまいち!まであるって云う面白さ。そして、皆がみんな、特上をお願いするのだけれど、この日は特上がなく、「『とても旨い』もかなり美味しいですよ」という語りに乗っかったが、これが凄かった。
驚くほど滑らかな舌触りに、本当に美味しいところだけという透明感のある濃厚さ。この形を見て頂ければ分かると思うが、他の肝を混ぜてテリーヌ状にはせず、良い肝だけを選んでそのままあん肝にしているからだそう。あん肝にそれほど興味はなかったが、正に開眼。

この興奮の中、カキフライそれも「大」と書いてあれば、お願いせざるを得ないというもの。確かに立派な牡蠣のフライで、衣は随分浅い色。頂いてみると、牡蠣の旨味がグワッとダイレクトにやって来る。なるほど、牡蠣を美味しく食べるためのフライ。好きなカキフライの概念が変わりそうだ。フェンネルを使ったタルタルソースも好いし、これだけでツマミになる。

なまこで、じわじわと酒と戯れるのも好いんだ。繊細な手入れに包丁仕事。コリコリの絶妙の食べ心地と酸味と甘さで、箸も止まらないが、盃を持つ手も止まらない。
やっぱり好きだなぁ。カウンター12席のみ。目の前に、もう貼る場所がない程にずらりと貼られた料理と酒の品書きに、次はどうしたものかと楽しい難題に頭を悩ませながら、静かに呑み、幸せに浸る。一見そっけないように見えるが、料理も店も丹精で上質。それを楽しみに来る人たちで、この日もカウンターは埋まる。
【お店情報】
さきと 福岡市中央区舞鶴2-8-25 地図
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