オーベルジュ・アンドラ・モンターニュ (南魚沼)
安心感のある美味しさと、新しい驚きと。
アンドラを訪ねるようになって、14回目の年末。すっかり馴染んだ場所だが、年によって天気も違ってヒヤヒヤすることも。年末はご存知のとおり雪が多くて、新幹線は通常運行だが、上越線が運休になる直前に滑り込み。オーベルジュの前も、見事な雪模様。
一方で室内は、温かくて美味しい香りで一杯。そして2階には、気持ちの良いベッド。本当に食い飲み、眠る幸せを感じるだけ。今回も、或る日の夜のメニューをご紹介。
アミューズは、オーストリアのチーズのオードブル、リプタウター。羊乳のチーズにパプリカ、玉葱などを混ぜたもの。軽くてほんのりとパプリカやハーブが香って食欲を誘ういいスターター。人参の美味しさを活かしたラペも素敵。
続いて、サーモンを生で。ナスキャビアをのせて。貧乏人のキャビアとも呼ばれる茄子をキャビアに見立てた定番の惣菜だが、茄子の風味と黒オリーブの香りと塩気が、サーモンの脂と好相性でワインが進むというもの。
ここでスープ。新潟港で採れた渡り蟹のビスク。ビスクというと、クリームベースの滑らかなものを思い浮かべるが、渡り蟹を殻ごと潰した感が手に取れるような濃密で香り高いスープ。口いっぱいの広がる蟹の旨味に思わずうっとり。そしてワインのアテにもなる濃いうま味。
沖ボラと真鯛のシュニッツェル、サラダ仕立て。シュニッツェルは見た目は同じに見えるが、食べてみると、脂の乗り方や食味の違う面白さ。手前にあるコロンとしたものは、ボラのヘソと呼ばれる部分。「飲み込んだ砂や泥などを吐き出す部分で、鶏の砂肝に似てますよ」と説明いただいたが、確かにコリコリとして噛むほどの甘みがジワリ。ボラというと唐墨のイメージだが、良い場所で獲れたボラは旨いもんだ。
続いては、猪とエゾ鹿のリエット。猪が右のやや白い方で、エゾ鹿が左。それぞれに個性はあるものの、旨みなどの本質だけを残して、そして軽やかというところが「らしく」て好きだ。
そして、いつも出されるフォアグラ料理は、フォアグラのムース、ブリオッシュと共に。数年前に新しく出されたメニューだが、ブリオッシュとの組み合わせなど、年々新しくなっている料理の一つ。フォアグラのムースにハチミツ、そしてブリオッシュの組み合わせなんて、どう考えたって美味しさしかないが、付け合わせに蕨の漬物という塩梅が好い。
翌日には、新たなフォアグラメニューが登場して、これがまた堪らないやつ。自家製の干し柿の、フォアグラのムースを詰めたもの。干し柿の熟した濃くも自然な甘さと厚みのあるフォアグラ。もう豊かでしかないところに、金柑が添えられているのが嬉しい。
前日のコースに戻って、エゾ鹿のグラーシュ。コク味たっぷりのシチューで、ホロホロになるまでじっくり煮込んだ鹿の旨味とエゾ鹿ならではの脂が、身体をぽかぽかと温めてくれる一品。
そして、大好きなおむすびがここで。魚沼のコシヒカリの新米。勝手な想像だが、年によって握り方が違うなぁという印象。ここでいただくご飯は、自分の中での指折り。絶対的な安心感があって確実に美味しい。
食後には、オーベルジュの庭で獲れたジューンベリーを使ったクーヘン。王道を基礎にしながら、地元で採れたものを使ったり、新しい工夫が見えるのが、とても楽しみ。人生の大先輩のその様にまた、今年も頑張ろうと思うのだ。あと、ワインが好きな方には、是非伺ってほしい。地下のセラーは見ものです。
【お店情報】
AUBERUGE-ANDRA-MONTAGNE 新潟県南魚沼市宮野下1191-1 HP
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