Yukio Sasaki (円山・札幌)

札幌に来る機会が増えて、この機に一度行ってみたいと思っていたのがフレンチ。北海道の旬の食材を使ったお店も多く、人気が高いと聞く。今回伺ったのは、Yukio Sasaki。料理の評判はもちろんだが、ご夫婦で営むレストランというところが、惹かれたところ。伺ってみると、路面店にも関わらず、小さな看板が掲げられているだけで、思わず見落としそうになくらい控えめな外観。けれども、一度扉を開けると、あっという間に、美味しい香りと温かさに包まれる。
案内されたのは、店の奥の席。厨房のさらに奥で、ゆっくりと過ごせる有難い席。予約時に料理も予約をしていたため、ここではワインを選ぶのみ。マダムの丁寧で的確だが、やわらかい話しぶりに、自然と気持ちが和んでいく。

マダムお手製のパンに続いて、先ず一皿目の皿が届く。「今日は利尻産の良い雲丹が入りましたので…」と説明していただいたのが、洒落た一皿。雲丹の下には、ワインのジュレと赤海老のタルタル。利尻の昆布を食べて育っただけあって、香りも甘みも豊かで濃密。そこに、繊細で清らかなジュレやタルタル。添えられたルッコラの花の微かな苦みが、山葵的でよく合う。

エディブルフラワーで可愛らしく仕上げた一皿は、鮪の中トロと、いちじく、桃とブランマンジェを組み合わせた一品。ブランマンジェは甘さはなく、茸などの風味が利いて、出汁を固めたような仕様。鮪と果実を合わせて食べると、これがまとめ役となって好い仕事。

たらば蟹の燻製は、運ばれてきたときの薫香がもう美味い。ほんのり甘いパンケーキにパプリカのムースや、じゃが芋の煎餅的なものの組み合わせ。たらば蟹にムースを添えてもいいいし、ムースをパンケーキ添えても好し。ムースのパプリカと乳製品の組み合わせと配合の為せる技。

また、繊細な一品がやって来た。大きなも厚みも立派な道産の帆立に、柔らかく煮た大根やフラン、ソースで組み立てたもの。帆立の見事さも然ることながら、噛みしめて広がる甘み。大根とフランは、とけるように柔らかく、控えめながらじんわりと旨味が広がる仕様。帆立の焼き目とソースの香りの相性も好い。ちなみに、この写真ではわからないが、大根のカッティングと盛り付け方の素晴らしさを、もし機会があれば見ていただきたい。

そして、鮑はステーキで。乳脂肪分を加えた肝ソースや、添えられたジャンボマッシュルームの美味しさ足るや。鮑やソースは然ることながら、マッシュルームにグッと味わいが詰まって、噛むほどにジュワッと旨いエキスが口いっぱいに広がる幸せ。

メイン料理に肉料理は、和牛に、ヤングコーンに高菜漬けやラディッシュなど。ヤングコーンの髭や日本らしい漬物を組み合わせる楽しいさ。

デザートには、パッションフルーツのミルクアイス添え。パッションフルーツそのままでも好いし、身をアイスに移して頂くのも好い。アイスクリームの、ヨーグルトのような軽やかさのあるのが心地いい。

最後に、泡状のソースを纏ったブランマンジェを頂いて〆。たっぷりと美味い料理とワイン頂いて、帰りは最後の客。シェフとマダムが見送りに出て下さって大満喫。北海道はダイナミックなイメージがあるけれども、こちらでは繊細で、小さいアクセントの使い方が印象的。北海道の奥深さを、知る。
【お店情報】
Yukio Sasaki 中央区南1条20丁目1-27 地図
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