達吉 磯ゆき (阿佐ヶ谷)

久しぶりの晴天に、夏がやって来たと感じる。こんな日には、半田そうめんの店で今年初めてのすだちそうめんを――と思ったが、生憎の定休日。それならば蕎麦だ。阿佐ヶ谷には佳い蕎麦屋が多く、それぞれが個性的。気になっているすだちそばもあったが、思いついたのは、「達吉」の磯ゆきだ。
「達吉」も阿佐ヶ谷で人気の蕎麦屋の一つ。12時の開店に合わせて店に向かったが、少し早かったようで、店の中ではご主人が蕎麦を打っている姿が見える。しばらくすると暖簾が上がり、店内に案内された。
お願いしたのは、もちろん磯ゆき。泡立てた全卵を冷たい蕎麦にまとわせ、もり汁で頂く蕎麦。江戸の頃からあるというが、今では出す店はあまりないと話に聞く。初めて口にしたときの、ふわふわとした食感と玉子の香りは今でも忘れられない。
見た目も淡く儚げで艶やか。泡を纏ったまま蕎麦をもり汁にくぐらせると、泡が少しずつ溶けていくのも、少し切ない。そこから一息に啜り上げると、ふわふわの泡と細打ちの嫋やかな蕎麦、もり汁のバランス良さが絶妙で、後には玉子の香りが仄かに残る。どことなく漂う儚さにも、惹かれてしまうのかもしれない。
夜のつまみも秀逸で、太刀魚の酒蒸しや、とうもろこしと枝豆の冷製茶碗蒸しなど、季節のおすすめに心が動く。思わず、夏酒が欲しくなる。
【お店情報】
手打ち 達吉 阿佐谷北2-15-4 地図
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