樽 (青森)

今年は、念願の汁物と巻物に到達!
毎年夏の青森旅。ここ数年気に入って毎年訪ねているのが、すし居酒屋 樽だ。美味い海鮮に、種類豊富な日本酒、そして店の雰囲気の素晴らしさ。地元の常連だけでなく、旅の人にも楽しんでいってほしいという気持ちが伝わってくる。

お通しから「吞んでって」という気配が漂うのが、まず嬉しい。青森らしく鮪や烏賊を使った料理が多く、今年は鮪のなかおちと、水蛸の酢味噌和え。頭や内臓(道具)も使われていて、食感も味わいも実に多彩。青森や北海道では、蛸の頭をよく食べるという話を聞くが、実際に口にするのは久しぶりだ。そして、これには、やはり日本酒。
ちなみに、日本酒は県外酒も多くあるが、青森の酒が中心。特に、田酒と豊盃は、それぞれ7~8種類がずらりと揃う。

お通しと日本酒を楽しんでいると、予約しておいた刺身の盛り合わせが運ばれてきた。所狭しと10種類以上の魚が並ぶ。見入っていると、お姐さんが、産地はもちろん、のどぐろなど、青森で揚がるイメージのない魚や海の状況などを教えてくれる。今年は、とりわけ帆立が良い。厚みと甘みをたたえ、むっちりとした身は噛むほどにとろけるようだ。

そして、見たらつい頼んでしまう貝焼きみそ。立派な帆立にわかめと葱をのせ、火が入るほどに潮の香りが立ち上がる。貝殻から出汁が出ているんじゃないかと思うような旨味に玉子が絡み、玉子好きならずともこたえられないツマミ。それにしても、今年の帆立は旨味や甘味が際立っている。

酒の肴に下足の唐揚げを。揚げ立てで下味がしっかりとついていて、そのままがぶりつくのが正解。太い下足を噛みしめれば、じわじわと広がる旨味に酒が進む。

昨年幾つか焼魚いただいて、その美味しさに感激したから、今年も何かをと品書きを見ると「初さんま焼 大」の文字。直前に魚屋で「今年の秋刀魚はいい」と聞いたばかり。この店ならと期待してお願いすると、思わずも取れるほど立派な秋刀魚。身は太く脂がのり、自らの脂で皮がふつふつと焼けて、脂もじわりと滲み出る。箸を入れると、腸まで綺麗で、背にも脂がしっかり。こんなに旨い秋刀魚は久しぶりだ。
今年こそはと狙っていたのが汁物。毎年注文しすぎて辿り着けず、しかも、地魚のあら汁と、十三湖のしじみ汁と2種類あって、ずっとどちらも捨てがたいと思っていたもの。迷ったときは両方だ。

しじみ汁は、まずそのふっくらとした身に驚く。そして、鼻を擽る海苔の香り。湖畔を思わせる透明な汁には、濃厚な滋味たっぷりと染みて、口に含むたびに体に静かに染みわたる。

あら汁は、普通の味噌汁の椀よりも大ぶりの椀で運ばれてきた。届いたとたんに広がる魚の出汁と味噌の香りが堪らない。口に含むと、脂ののった身から染み出た旨味が汁に溶け込み、素朴ながら力強い味わい。お供にもらったすじこ巻きも、塩加減が好みにぴったり。ご飯とすじこの塩梅が細巻ならではの塩梅で、この上ない〆。
この店では毎年よく笑うが、今年もそう。大将や女将さん、お姐さんたちの溌溂とした声と機転の利いた対応で、誰もがご機嫌。佳い肴に佳い酒。そして旅を楽しんでほしいという気持ちが満ちている。この楽しさを味わいに、また来年もここへ。
【お店情報】
すし居酒屋 樽 青森市新町1-11-13 地図
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