むとう 日替わり膳 (銀座)

今日出社したら宿題にしていた中国料理店に行こうと思っていたけれど、昼が近づくにつれて和食の気分。久しぶりに「酒の穴」で大きな茶碗蒸しもいいなと思ったが、「むとう」の金曜日の日替わりはまだ食べたことがなかったかもしれないと気がついた。
「むとう」は昭和28年から続く日本料理店。一時は外国人観光客の方々で長蛇の列が出来ていて、足が遠のいていたが、最近は行列も落ち着き、そろそろ伺いたいと思っていたのだ。
日替わりは曜日ごとに内容が決まっていて、金曜日は肉料理の日。今日は何だろうと店のInstagramをのぞくと、「8月30日で閉店する」という驚きの知らせが目に飛び込んできた。しかも、記事は今朝投稿されたばかり。これは、今日行くべきだ。
店に入ると、静かながらほぼ満席。ちょうど一人席を帰ったばかりだったようで、「今片づけますね」と言ってすぐにカウンター席を用意してくれた。今日の日替わりは「国産牛ロースあぶり」。確かにこれは初めてだ。
初めて「むとう」を訪れた日のことを思い出す。まだ古い店舗で、ビルの谷間に佇む風情ある構え、立派な白木のカウンターに、キリッとした白衣の板前。まだ若かったから(17年前!)、少し背伸びをして訪ねたことを覚えている。
「お待たせしました」と料理が運ばれる。メイン料理の牛ロースのあぶりは、想像以上にこんもりと盛られ、しっかりと枚数もある。火入れも見事で、口に運べば、やわらかく、牛肉の香りと品の良い脂の旨味が口に広がる。塩とポン酢、両方の味を楽しめるのも嬉しいし、下に敷かれた芥子をきかせたもやしがしみじみ美味い。
副菜の切干大根や玉子豆腐も、家庭のものとは違う風味と味わい。デザートの水ようかんも、甘さと清涼感のバランスがとても好い。
食事の美味しさはもちろんのこと、温かくも凛とした雰囲気がとても好きだったし、店を出てなお残る余韻もまた心地よかった。ありがとうございました。
つい「いつもそこにある」と思ってしまうが、終わりがあることを改めて感じた今日。行きたいところは行けるときに行っておくべし。
【お店情報】
日本料理 むとう 銀座6-4-16 地図
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