岩戸 豚汁定食 (銀座)

寒さに背中を押され、少し間が空いたこともあって、今日はどうしても岩戸の豚汁だと決めていた。引戸を開け、入口で食券を買いながら、ふと違和感に気づく。いつもなら真っ先に届く女将さんのあの声が、今日はない。店内を見回してもその姿は見えず、そのことが少し胸に引っかかる。
ほどなく運ばれてきた豚汁は、いつもの堂々たる佇まい。大きな器にたっぷり、立ち上がる湯気の向こうには、大ぶりにカットされた具材たち。豚の脂が溶け込んだ汁は相変わらず深く、ひと口すすれば体の芯がゆるりととける。大根は箸で持ち上げるとずっりとした重く、噛めば中から熱々の旨味がじゅわりと旨味が溢れ出す。里芋、人参、玉葱、それぞれの甘さや味わいにしみじみする。
豚汁の最高の相棒が、たっぷりのタレを纏ったまぐろの漬けだ。これをご飯にのせて頬張り、合間にがり昆布を挟む。そしてまた豚汁。メニューが絞られた今も、この三位一体の完成度は揺るぎない。
胃の腑から温かさに満たされるほどに、やはり女将さんの不在が心許ない。あの声が迎えてくれてこそ、ここに来た実感が満ちるのだと、改めて思う。たまたまのお休みであればいいけれど。
【お店情報】
岩戸 銀座店 銀座1-5-1 地図
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