國定 だし巻き玉子定食 (銀座)

焼売の気分だったか、あるいは気になっている新しい店へ行こうか。そんな迷いは、今日が火曜日だと思いだした瞬間に消え去った。食べたいものは決まった。火曜日限定、國定の出汁巻き玉子定食だ。
地階へと続く階段を降り、引き戸を開ける。先客は二組。カウンター席の向こう端に座る客のへに、「おまたせしました」とだし巻き玉子が運ばれていく。やはり火曜日にはこれをと楽しみにしている同志は多いようだ。
注文を済ませると、厨房では調理が始まる。小気味よく玉子が溶かれ、丁寧に焼き上げられていく。その鮮やかな手捌きを眺められるのも、カウンター席の醍醐味だ。
運ばれてきたのは、目に鮮やかな黄色が眩しい玉子焼き。土鍋炊きのご飯に具沢山の味噌汁、小鉢に水キムチ。玉子焼き用の「かえし」と、味噌汁用の「生七味」が添えられ、期待が高まる。
まずは、味噌汁の器を手に取る。指先に伝わるずっしりとした重み。器を近づけると、懐かしいコク深い味噌の香りと共に、たっぷりとしたきのこや野菜が顔を出す。これは重いはずだ。一口啜れば、味噌と野菜の旨味がじんわりと身体に染み渡る。
そして、主役のだし巻き玉子。温かくて何より塩梅がすばらしい。箸を入れると押し返すような弾力があり、口に踏んだ瞬間にやさしい出汁が溢れ出す。控えめな甘さと、とろとろ過ぎない絶妙な火入れ。場所によって黄身の濃かったり、白身の食感が際立ったりと、一口ごとに表情が変わる揺らぎも愛おしい。炊き加減のご飯に、小鉢、水キムチ。味、ボリューム、そして温度。細部まで全てが好みにピタリと重なる理想の定食。
ふと品書きに目をやると、今月の月替わりは「冷やしきつね蕎麦」。店を出ればジャケットを脱ぎたくなるような汗ばむほどの陽気。今年の春は足早に過ぎ去ろうとしているのかもしれない。
【お店情報】
手打ち蕎麦國定 銀座6-1-16 花椿ビルB1 地図
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