2026年4月10日

味彩坊 日替わり定食 (阿佐ヶ谷)

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無性に魚が食べたい気分だ。折り悪く雨も降り出したが、アーケードのある阿佐ヶ谷パールセンター商店街なら心強い。いくつか魚料理のある店を頭に描きながら、活気ある通りに歩みを進める。商店街の中ほど、和食が人気の「味彩坊」の店頭で足を止める。日替わり品書きを覗くと、そこには「ぶりの照り焼き」の文字。今日はこれに呼ばれた、と直感。

狭い階段を上がると、カウンターの一席を除いて満席という盛況ぶり。「一人です」と指を立てて告げ、滑り込むように席へ。注文から間を置かずして盆が運ばれてくるスピード感も日替わりの大きな魅力だ。

ぶりの照り焼きは、ただ焼いただけではない。薄く纏わせた衣に、飴色のタレが実によく絡み、見た目にも食欲をそそる。箸を入れれば、ふっくらとした身の質感。噛み締めるほどにぶりの力強い旨味が口いっぱいに広がり、甘辛いタレが白飯を誘う。脇を固めるのは、シャキシャキとしたごぼうサラダにたっぷりの味噌汁、そして香の物。定食としてこれ以上ない盤石の布陣。

12時を過ぎると、席を立つ客と入れ替わるように、近隣で働く人々が続々とやってくる。周囲の常連客たちがこぞって頼む「若鶏のぽん酢焼き」も一度食べてみたいものだが、やはり日替わりの興味深さは捨てがたい。

気取らない「普段着」の空気感。活気ある店内の心地よさに身を委ね、店を出る頃には
午後の活力も十分。阿佐ヶ谷の日常に欠かせない、地元密着の良店。

【お店情報】
味彩坊 阿佐谷南1-34-13 魚清ビル2F 地図

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2026年4月 9日

柿ざわ 蛤そば (阿佐ヶ谷)

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阿佐ヶ谷の路地裏、凛とした空気が流れる「柿ざわ」。冬にいただいた下仁田葱の甘み、衣に染みたつゆが忘れられず、今度は、春の訪れを告げる品を求めて再び暖簾をくぐる。

店内を見渡せば、人生の先輩方がゆるりと酒や蕎麦を愉しむ、相変わらずの穏やかな光景。この落ち着きこそが、この店の美徳。お目当ての「季節のそば」に目をやれば、そこには「蛤」の文字。心の中で小さく快哉を叫び、迷わず注文を済ませる。

ほどなくして運ばれてきた、春を湛えた一器。蓋を開ければ、目に飛び込むのは立派な殻を携えた、大ぶりなはまぐりが三つ。そして、磯の香を運ぶ生海苔。驚かされたのは、そのつゆの佇まい。一般的な醤油色のそれではなく、まるで極上の「潮汁」を思わせる、淡く、ほんのりと白濁した仕立て。

まずは、そのつゆを一口。口中に広がるのは、はまぐりの上品でいて濃密な甘み。雑味のない、どこまでも澄んだ海の慈しみ。そこに添えられた針生姜が、心憎い。ピリッとした微かな刺激が、淡い味わいの輪郭を鮮やかに縁取り、風味をいっそう引き立てる名脇役。

主役のはまぐりは、熱が入ってもなお、むっちりと太った見事なもの。噛み締めるたびに、閉じ込められていた旨味がじわりじわりと溢れ出す。蕎麦を啜れば、生海苔の風味が絡み合い、鼻へ抜ける香りはまさに春の息吹そのもの。

冬の葱も佳かったが、この春の昂揚感もまた格別。店を出れば、先ほどまでの余韻が心地よく、家路につく足取りも心なしか軽やか。春の陽気に誘われて、少し浮足立ちそうになる自分を、そっと宥めながら歩く幸せ。

【お店情報】
柿ざわ 阿佐谷南1-47−8 地図

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2026年4月 7日

スパイスカレー トカ 2種盛りカレー (南阿佐ヶ谷)

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南阿佐ヶ谷のすずらん通り商店街にある「トカ」は、在宅勤務中にスパイスの刺激が欲しくなると、つい足が向いてしまう一軒だ。あいにくの空模様ゆえか、いつもは賑わう店内にすんなりと入れたのは、今日一番の幸運かもしれない。

今回の目当ては、季節のカレーとして登場した「ラムコフタカレー」。これに前回もいただいた、山椒が鮮烈に弾ける定番の「ポークキーマカレー」を合わせ、2種盛りで注文する。色とりどりの副菜が添えられた一皿が届くと、その端正な佇まいに、沈みがちだった雨の日の気分も自ずと晴れていく。

まずは主役のラムコフタ。スプーンで肉団子を割れば、ラム特有の野生味ある香りがふわりと立ち上がり、肉の旨味が口いっぱいに広がる。カレー自体もしっかりとした辛味とスパイス感があって、ラムの個性に負けない魅力的な仕上がり。一方のポークキーマは、相変わらずネパール産山椒・ティンブールの爽快な痺れが心地よく、食欲を一段と加速させてくれる。鮮烈なスパイス感やそれぞれのカレーの個性、食べた後の心地よさに、やはりここが好きだと思う。

食後に店を出て、買い物を終えて再び店の前を通りかかると、店内はかなりの賑わい。あの絶妙なタイミングでこの一皿に出会えた悦びに浸りながら、次はどんなカレーが待っているのかと、早くも次回の再訪に思いを馳せる。

【お店情報】
SpiceCurryToca 阿佐谷南1-9-7 センチュリー大和 1F 地図

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2026年4月 6日

瓜坊 小鉢の定食 (荻窪)

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旨い飯と味噌汁と、料理がいくつか。求めるのは、そんな和定食。そんなときは「瓜坊」だ。ホカホカのご飯に、透明感すら感じる美味い出汁の味噌汁。主菜に小鉢、香の物が揃う定食が、いつものこの店のスタイル。

今日はどんな献立だろうかと品書きを覗けば、納豆オムレツやマグロカツといった定食の下に、「小鉢の定食」の文字。小鉢が七種類も並ぶこの定食は、お目にかかれない日も多い、まさに幻のメニュー。出合えた幸運に、思わず頬が緩む。

運ばれてきた盆の上は、実に賑やか。紫キャベツのコールスローに、小松菜の煮浸し、レンコンの金平、そして卵焼き。シャキシャキとした歯ざわりや、しっとりした出汁の含み。少しずつ異なる食感の楽しさが、何とも楽しい。豚肉と筍の炒めものに、クリームグラタンという温かい料理も。冬の名残と春の息吹を感じる筍の風味が思いかけずうれしい。

これだけの種類の料理を一度に食べられるのは本当にありがたい。そして今日も、旨い美味いご飯とやさしく沁みる味噌汁もいただいて大満足。体にも心にもやさしい定食のありがたさが染みる。

【お店情報】
瓜坊 荻窪5-23-6 地図

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2026年4月 2日

ぷちぽわ サーモンのポワレ (荻窪)

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魚が食べたい日は、お決まりの定食屋をいくつか覗くのが常。魚料理な何でも揃う店や、お気に入りの定食屋を覗いてみたが、今日に限ってどこもしっくりこない。そんな時、ふと頭をよぎったのがビストロ「ぷちぽわ」だ。

ぷちぽわのランチは、肉、魚、ビーフシチューの三段構え。本日の魚料理を確認すると「サーモンのポワレ」の文字。以前いただいた際、その鮮やかさと実直な美味しさに心掴まれた記憶が蘇り、迷わず扉を開けた。

まずは、セットのスープとサラダから。四月とはいえ、今日はまだ肌寒さが残るから、温かいじゃがいものスープが心地いい。ドレッシングも記憶にあるより酸味と辛味が立ち、重たくなりがちな春の空気をすっと整えてくれるような、軽やかな仕上がり。

主役のサーモンは、運ばれてきた瞬間、思わず感嘆が漏れるほどの美しさ。鮮烈なトマトソースを背景に、ブロッコリーや人参といった彩り豊かな野菜たちが、驚くほど厚みのある身を囲む。皮目はカリッと香ばしく、中はしっとりと柔らかな質感。バジルの爽やかな薫りがトマトの酸味を縁取り、一皿の中に春の華やぎを凝縮したような、密度の高い味わい。

12時を過ぎれば、店内は瞬く間に満席。早々にビーフシチューが完売し、外で待つ人の姿が見えるほどの賑わい。皆、地元の旨い洋食屋を心待ちにしていたような、柔らかな活気に満ちている。

そして、これだけの満足度を誇りながら、今なお1,000円という価格を貫いていることに頭が下がる。好きな店が賑わうのは喜ばしいが、これ以上入りづらくなっては困る——。壁の夜メニューに密かに心奪われつつ、そんな贅沢な悩みが頭をよぎる、幸せなひととき。

【お店情報】
ビストロぷちぽわ 荻窪5-23-7 加藤ビル1F 地図

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2026年3月31日

オトノハ 麻婆豆腐定食 (荻窪)

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外に出てみると、小雨混じりで風も強くて、温まるものが恋しくなる。辛いスープや煮込み系の料理もいいが、頭をよぎったのは麻婆豆腐だ。

大好きな「オトノハ」のInstagramを覗くと、今日の副菜は「春巻」との報。ここの副菜はどれも外れがないが、とりわけ春巻には目がない。しかも今回は「根三ツ葉入りのアスパラとハムの春巻」という、これまでお目にかかったことのない組み合わせ。これは、行かない手はない。

あいにくの空模様に足元を気にしながら店へ向かい、扉を開けると、天候のせいかいつもより空席が目立つ。少し得をしたような気分で席につき、迷わず麻婆豆腐を。

運ばれてきた麻婆豆腐は、鮮やかな赤というより、どこか深みのある黒。立ち上る香りの、なんと芳しいことか。出来立て熱々を頬張ると、山椒の小気味よい刺激はありつつも、辛味はあくまで上品。むしろ、味噌のような深いコク味が印象的で、食べるほどに身体に馴染むような、落ち着いた味わい。

そして、お目当ての春巻。パリリと小気味よい音を立てる皮の中から、根三ツ葉の香りとシャキシャキした食感が弾ける。繊細な細さが、軽やかさを際立たせ、実になんとも品がいい。

時計の針が12時を回る頃。気づけば店内はあっという間に満席。この店を愛してやまないファンたちにとって、雨など大した問題ではないらしい。

【お店情報】
オトノハ 阿佐谷南1-14-12 地図

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2026年3月30日

おかゆテラス 季節野菜のおかゆ (阿佐ヶ谷)

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昨年末のオープン以来、すっかりこの街の風景に馴染んだ感のある「おかゆテラス」。イタリアンやフレンチを思わせる洗練された店構えは、オープン直後の喧騒を経て、今やこの界隈になくてはならない風景として定着した様子。季節が移ろい、再びその暖簾を潜れば、昼時の活気とともに温かな空気が迎え入れてくれる。

お目当てはやはり、一期一会の出会いがある「季節野菜のおかゆ」だ。注文をすませると、まず運ばれてくるのがこの店の名刺代わりの「おかゆ玉」。丸く成形され、表面を香ばしく焼き上げたその一粒に箸を入れれば、パリッとした軽快な食感のあと、中から熱々のおかゆがとろりと溢れ出す。ごく控えめな塩気が米本来の甘みを鮮やかに引き立て、これから始まる食事への期待を静かに、けれど確実に高めてくれる。

ほどなくして届く主役の器には、春の息吹を映した緑の野菜。今回は、香ばしく焼き目をつけた白菜と菜の花。レンゲですくい上げれば、鼻を抜ける芳醇な香りと菜の花特有の柔らかなほろ苦さが、柔和な風味のおかゆに新たな表情を与えてくれる。前回の「発酵オレンジ白菜」とはまた異なる、季節を丸ごといただくような充足感。

付け合わせの選択も、この店を訪れる密かな愉しみ。前回のワインを誘うような「豚のリエット」も捨てがたいが、今回は端正な「たたき梅」を。なめらかな舌触りと凛とした酸味がおかゆの輪郭をいっそう際立たせ、昆布漬けの人参や大根といった脇役たちとともに、飽きさせることのないリズムを生んでいる。

周りを見渡せば、勝手知ったる様子でスプーンを運ぶリピーターたちの姿。次は、多くの客が楽しんでいる「骨付き鶏肉のコンフィのおかゆ」を。

【お店情報】
おかゆテラス 阿佐谷南3-2-22 地図

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2026年3月27日

カーザドルチェカーザ 本日の魚のムニエル (浜田山)

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爽やかな陽気に誘われて、少し足を延ばしたくなって少し歩く店を目指そうと閃いた。ふと、善福寺川沿いの桜が気にかかる。都内でも有数の花見の名所。その並木道をそぞろ歩き、開花具合を確かめながら「カーザドルチェカーザ」を目指そう。

期待の桜は、木によって七分咲きもあれば、まだ二分ほどでじっと出番を待つものも。家族連れがお弁当を広げる賑わいを横目に店へ。2階の窓から公園の緑(と、これからの淡いピンク)を一望できる、静かで絶好のロケーション。この景色もまた、ご馳走のひとつ。

ランチはパスタ、肉、魚から選べる4種類。若鶏のグリルに後ろ髪を引かれつつも、今日はジェノベーゼソースの鮮やかさに惹かれて「ワラサのムニエル」を選択。

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2026年3月26日

鍋家 玉子の甘酢炒め (阿佐ヶ谷)

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阿佐ヶ谷「鍋家」の週替わりメニューに、あの「玉子炒め」の文字を見つけると、どうにも抗えない。これまで、滋味深い「小柱と玉子の塩あんかけ」や、旨味の濃い「あさりと玉子の炒め」など、数々の玉子炒めに心奪われてきた。

以前いただいた、ケチャップ風味がどこか懐かしい「小柱と玉子の甘酢あんかけ」も、忘れがたい一皿。しかし今回の品書きは、それ以上に潔い。直球勝負の「玉子の甘酢炒め」だ。

席に座って注文を済ませると、お櫃にたっぷりよそわれた白飯、かきたまスープ、そして春雨炒めが一斉に届き、一呼吸置いたところで主役の登場。こんもりどころか、もはや「山」と呼びたくなるほどのボリュームを誇る玉子炒め。その頂から裾野まで、眩しいほどに鮮やかな紅色の甘酢あんが、とろりと贅沢に。立ち上る甘酸っぱい香りに、否応なしに食欲が突き動かされる。

スプーンを入れれば、どこまでいっても厚く柔らかな玉子の層。具材は細やかなネギが少々。これほどまでに玉子そのものに光を当て、その魅力を引き出した料理が他にあるだろうか。舌の上でほどける玉子の甘みと、甘酢のキュッときいた酸味。その絶妙な塩梅に、スプーンを動かす手が止まらない。

飾らないけれど、これ以上ないほどに満たされる昼下がり。次はどんな玉子炒めに出会えるのか、早くも来週の献立が待ち遠しい。

【お店情報】
鍋家 阿佐ヶ谷店 (KOYA) 阿佐谷南1-16-11 地図

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2026年3月24日

阿波や壱兆 鯛と春野菜のそうめん (阿佐ヶ谷)

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近頃、どうしても再会を待ちわびていた一杯がある。大好物の半田そうめんの専門店「阿波や壱兆」の「鯛と春野菜のそうめん」だ。昨年の「鯛と薬味野菜のそうめん」がとても美味しさが忘れられず、野菜が春の装いへと変わって再登場したと聞けば、期待に胸が高鳴らないはずがない。

席につき注文を通すと、あいにく春野菜の主役、筍が品切れとのこと。少し肩を落としたが、「その分お値引きしますね」という店主の温かな心遣いに、かえって胸が温かくなる。

運ばれてきたのは、淡い桃色の鯛と鮮やかな菜の花が寄り添う、春を凝縮したような一器。筍がなくとも、そのコントラストは十分に眩しい。添えられた大野海苔の磯の香りが、ふわりと鼻腔をくすぐり食欲を突き動かす。

まずは透き通った出汁をひと口。鯛のあらから丁寧にとったであろう、雑味のない上品なコク。出汁の熱でほんのりと白んだ鯛の身は、口に運べば驚くほどふんわりとやわらかく、噛みしめるほどに上品な甘みがじわり。そこに薬味野菜とはまた違う、菜の花特有のほろ苦さが良いアクセントとして加わり、鯛の甘みをぐっと引き立てる。これぞ春の妙味。

筍の不在を忘れさせるほどに完成された春の味で、太めの半田そうめんがこの繊細な出汁をしっかり抱き込み、喉を通る瞬間の幸福感。名残惜しくも、メニューにあるうちに、ぜひもう一度。

【お店情報】
阿波や壱兆 バイパス店 阿佐谷南3-2-3 ローレルビル 1F 地図

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